酸化チタン( TiO2)とは?
チタン( 元素記号はTi )という金属が酸化したものです。
金属の粉で、白色の着色料として使われています。
錠剤に輝度や白色度または隠蔽性を持たせたり、カプセル上に文字を印字する目的で使用されます。
被覆力、着色力にも優れ、比較的に安価かつ安全な物質と言われています。
また、ダイヤモンドより高い屈折率、可視光を吸収しないといった特性を持つため、紫外線吸収剤としても使われています。
サプリには、以下のような表記や用途があります。
例:原材料の表記と用途
【被包剤】ゼラチン、着色料(カラメル、酸化チタン) |
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・「ゼラチン」 :カプセル自体の原料 ・「カラメル」 :茶色のカプセルの色 ・「酸化チタン」:カプセルに書かれている文字に使用 |
化粧品、化学繊維、医薬品、塗料、インキ等の分野で幅広く活用されている物質です。
※正式には「二酸化チタン」と呼ばれますが、「酸化チタン」という簡略化した表示を使うことが認められています。[1]
酸化チタンの安全性は?

酸化チタンは白色顔料として長い歴史があり、様々な用途に使用されて約100年(ナノ酸化チタンは約40年)ほど経過しています。
ですが、今のところ「酸化チタン(ナノ酸化チタンを含む)」が原因とはっきり断定できる健康被害の報告はありません。
それでも、健康リスクの疑いがあるという議論が沸き起こっており、日本でも発がん性・毒性を気にする人が多くいます。
下にまとめたように、権威ある各機関の見解は一致していません。
代表的な機関の見解:
IARC(国際がん研究機関)* | 吸入ばく露によりラットの肺に腫瘍が認められた |
NTP(米国国家毒性プログラム) | 103週間の動物実験を根拠に、発がん性はない |
EU(欧州化学庁) ACGIH(米国産業衛生専門家会議) 日本産業衛生学会 | 十分な証拠が認められない |
*IARCはWHOの一機関。
酸化チタンの発がん性については、現状では「疑いがある」としか言えず、今後も検証を続けていく必要があります。
摂取するかどうかは各個人の判断に委ねられています。
ただ、サプリメントに着色料を入れる理由を考えると必須の食品添加物とは言い難く、その存在に疑問を感じる人も多くいます。
ナノ酸化チタンとは?

顔料酸化チタンより粒子径が一桁小さい「ナノマテリアル*」サイズのものを指します。
*「少なくとも一次元が 100nm(ナノメートルnm=10 億分の 1 メートル)以下の長さの素材のことを言います。
紫外線散乱剤として化粧品で多く使用されています。
酸化チタンという金属の粉で肌を均一に覆って紫外線を肌表面で反射、散乱させて紫外線が体に届く前に防ぎます。

紫外線を反射、散乱させる
化粧品では、以下の目的で使用されています。
- 屈折率が大きいため、紫外線防止に利用。
- 白色顔料としての付着力・のび・隠ぺい力。白さが増大。
- ファンデーション等での滑らかな感触。
- 微粒子であるため肌塗布時に透明性が高く白浮きしない。
ナノ酸化チタンの安全性は?

「ナノ酸化チタン」は極小物質のため、量子効果*が発現する可能性があります。
*粒子のサイズがナノ領域になったときに現れる物性のこと。
これが細胞に及ぼす悪影響については、いまだに解明されていません。
化粧品のナノ酸化チタンは皮膚に直接すりこむ用途に使われるため、「ばく露リスク」が高いと言われています。
ただ、どういう経路で、どの程度のばく露量であれば、どういった悪影響があるかといった科学的なデータは不足しています。
フランスは使用を禁止
・酸化チタンは EU で認証された食品添加物として使用されていますが、フランスは独自の規制として、2020年1月1日からナノマテリアルである二酸化チタンを含む食品の市場投入を禁止しています。
・これは、フランス食品環境労働衛生安全庁(ANSES)が、「二酸化チタンの発がん性のリスクに対する疑いを排除する新たな情報はない」とし、二酸化チタンがナノ粒子のため生体組織を通過しやすく、発がん性物質の可能性があると結論付けたことによります。
将来、特定のナノマテリアルの有害性が科学的に証明されれば、食品や医薬品での使用がもっと多くの国で規制されるようになるかもしれません。
まとめ
酸化チタン(ナノ酸化チタンを含む)の発がん性・毒性については、その「疑いがある」というのが現時点での結論です。
「これまでこんなに長く使われて来たにも関わらず、はっきりとした健康被害の報告もなかったのだから問題ない!」
と言う人もいれば、
「健康のために飲むサプリに健康リスクが伴うのは本末転倒!」
と考える人もいると思います。
決定的な証拠がない以上、サプリに酸化チタンを添加しているメーカーをあからさまに非難することも、明確に擁護することもできないのが現状です。
どちらかに偏った口コミに影響されることなく、各自がよく理解し納得した上でサプリを選ぶのが良さそうです。
参考文献:
[1]「食品衛生法に基づく添加物の表示等について」平成22年10月20日付け 消食表第377号 消費者庁通知 別紙1 簡略名一覧表。公益財団法人 日本食品化学研究振興財団HPより。