サプリの原材料を見ると、「微粒二酸化ケイ素」という食品添加物が入っていることがあります。
「微粒二酸化ケイ素」とは何でしょうか?どんな目的で使用されているのでしょうか?
「体内では消化吸収されずに排出されるため、害はない」と言われていますが、何か注意すべき点はあるでしょうか?
※「微粒二酸化ケイ素」は、食品添加物として「微粒酸化ケイ素」、「微粒シリカゲル」という簡略化した表示の使用も認められています。[1]
微粒二酸化ケイ素とは?
ケイ素と酸素の化合物(SiO2)で別名シリカと呼ばれます。
滑らかな触感を持つ白い微細な粉末です。
特性:
- 多孔質(小さな穴が多く空いていること)と広い表面積
- 硬度が高い
- 不溶性(水に溶けない)
乾燥剤として使用される「シリカゲル」の原料は、微粒ではない二酸化ケイ素になります。
「二酸化ケイ素」は、酸素・炭素・他のケイ素と結合することで、シリコン、シリコーンとなり、あらゆる分野で活用されています。
微細に粉砕された「微粒二酸化ケイ素」は、粉末食品向けの固結防止剤として流動性を保つために添加されます。
安全性・安定性に優れていて、
- 毒性はなく、体内で消化吸収されないので、食べても中毒を起こす心配はない
- 化学的にとても安定した物質で、周囲を腐食・汚染させない
とされています。
食品添加物として厚生労働省より使用が認められていて、以下のような特性と用途があります。
吸液する機能
多孔質により粉体粒子の中に液体をとどめる吸液能力があります。
この特性を利用し、湿気ってダマになるのを防ぐ吸湿剤(乾燥材)として使用されています。
流動性の比較:

サプリメントでは、流動性向上、吸湿を防ぐ目的で添加されています。
また、ふりかけといった粉末食品向けの固結防止剤として、流動性のある状態を保つために添加されます。
アイシャドーやファンデーションといった化粧品においても、湿気による固形化を防ぐ目的で使用されます。
溶解をコントロールする機能
多孔性のため、シリカ粒子内に成分を封入することで、溶解性の向上、徐放性のコントロールができます。

多孔質により溶解性・徐放性をコントロール
これはさらに、錠剤の硬度UPにも寄与します。
ろ過する機能
多孔質な構造により、固形物(不純物)を捕捉し、液体は通過させます。
コーヒーを入れる際に使う「紙フィルター」のような役割を果たし、濁度の高い原液から固形物を分離して清澄なろ液を得ることができます。

ろ過で液体を滑らかにする
この特性を利用し、ろ過助剤としてビール、ぶどう酒、清酒、清涼飲料水、しょう油、食酢、砂糖(サトウキビ)などの精製に使用されます。
微粒二酸化ケイ素の濾過層で微細な粒子をからめ捕り、さらにろ過層内の複雑で迷路のような通り道で物理的に粒子を留め、電気的に細かいものまで捕らえます。
ろ過助剤として使う場合は、「最終食品の完成前に除去すること」と決められているので人体への影響を心配する必要はありません。
研磨する機能

水晶と同じ成分で硬度が高いため、歯磨き粉に研磨成分として使用されたりします。
歯を白くする練り歯磨き粉に入っているシリカ(二酸化ケイ素)は、使い過ぎるとエナメル質を傷つける恐れがあると言われています。
微粒二酸化ケイ素の安全性は?
二酸化ケイ素(シリカ)には、次の2種類があります。
- 結晶質(鉱物由来)
- 非晶質(珪藻土・植物など由来)

そして、非晶質には、
- 不溶性
- 水溶性
の2種類があります。
サプリに添加されているのは、「非晶質の不溶性」シリカです。
シリカ結晶質・非晶質の比較まとめ:
湧き水や植物などに含まれる非晶質の「水溶性」シリカは、必須ミネラルか⁉と騒がれ、現在シリカ水といった商品が売られています。
鉱物由来(結晶質)は発がん性有り
WHOの一機関である国際がん研究機関(IARC)は、鉱物由来の結晶質ケイ素を発がん性を作用させるグループに分類しています。
食品添加物には使用されていません。
非晶質は「分類できない」
サプリの食品添加物として利用される非晶質のシリカは、
「無毒性で化学的に不活性、かつ不溶性で水には溶けないため、体内では消化吸収されずに便として排出されるため害はない」
とされています。
ただ、それがはっきり証明されているわけではありません。
国際がん研究機関(IARC)は、
非晶質シリカはグループ3(ヒトに対する発がん性について分類できない)に分類
しています。
IARCは非晶質シリカ全体 (本物質以外に珪藻土、生物起源のシリカ繊維も含む) に対し、発がん性に関する証拠はヒトで不十分、実験動物で合成型非晶質シリカに対する証拠も不十分 (後述) として、非晶質シリカ全体に対して発がん性分類を「グループ3」とした (IARC 68 (1997))。
厚生労働省 職場のあんぜんサイト
発がん性は認められていませんが、今のところこのグループ3に分類されています。
※グループ3の分類の詳細については、農林水産省HP IARC発がん性分類を参照。
使用の制限と限度
今のところ微粒二酸化ケイ素は、体内で消化吸収されないと考えられています。
ただし、体外へ排出するために余計なエネルギーを使い、内臓にも負担をかけます。
そのため、厚生労働省の告示の中で、
「母乳代替品(粉ミルク)や離乳食には使用してはならない」
と禁止されています。
生後1~2ヶ月の赤ちゃんの1日の授乳回数が7~8回、1日合計700~1000mlくらいが目安とされています。
もし添加されていたら、たくさん摂取することになってしまいます。
体に吸収されないので、妊娠中であっても母乳に含まれることはないと言えますが、体への余分な負担をかけるものは避けた方がいいでしょう。
厚生労働省は使用する際の最大限度量について、
- 使用量は、二酸化ケイ素として、食品の 2.0%以下でなければならない。
- ただし、ケイ酸カルシウムと併用する場合は、それぞれの使用量の和が食品の 2.0%以下でなければならない。
と規定しています。[2]
2%以内の少ない使用量であれば、人体に害を及ぼすことはないと考えられています。
厚生労働省の規定をまとめると、以下のようになります。
厚生労働省の定める使用制限:
二酸化ケイ素 | ろ過助剤の目的以外の使用不可 最終食品の完成前に除去すること |
|
微粒二酸化 ケイ素 | 2.0% 特定保健用食品たるカプセル及び錠剤並 びに栄養機能食品たるカプセル及び錠剤 以外の食品にケイ酸カルシウムと併用す る場合は、それぞれの使用量の和 | 母乳代替食品及び離乳食に使用 してはならない |
安全とされる「非晶質 」の由来は?
シリカは、圧力や温度などの条件により、さまざまな形態をとります。
もともとの植物にあるケイ素(シリカ)は非晶質ですが、高温(例えば800℃以上)で焼成すると結晶化します。[4]
また、薬品での融解・抽出などのいろいろな処理方法で、鉱物由来のケイ素を非晶質に変えているとするシリカ商品も販売されています。
抽出・処理方法により変わり得るため、メーカーの説明内容をしっかり確認する必要があります。
参考文献: